膨大な赤字を抱え込んだ財政についての財政構造改革白書

2020/05/09
膨大な赤字を抱え込んだ財政について報告には後に事あるごとに引用されるようになる次の文章が含まれていた。「現状は例えて言うならば近い将来において作裂することが予想される大きな時限爆弾を抱えた状態であり、且つその時限爆弾を毎年大きくしていると言わなければならない」報告は福祉、医療、教育予算の削減を求めるとともに遠慮がちながら公共事業にも批判の目を向けていた。

例えば「社会資本の整備に際しては、そのコストとベネフィット(費用と便益)を比較衡量する必要があり、整備された社会資本から生まれる便益が果たして将来世代の負担に見合うほどのものであるのかというチェックが不可欠である」と述べ、具体的には「より人口集積の少ない地域の道路」に「慎重な判断」を求めている。

異例なことに特別部会の席で用いられた討議資料を整理した「財政構造改革を考える明るい未来を子どもたちに」という報告書を発表した。国民に事態の深刻さを知ってもらうためだという。

更に異例なことに、こうした文書が全文で439ページもある「財政構造改革白書」(東洋経済新)と銘打たれて同年10月に市販された。類書があったとすれば、政府が1970年7月に刊行した「歳出百科」(大蔵省主計局編)だろう。それは1970年代の初めに世界を襲った石油危機で池田勇人首相の「所得倍増計画」や田中角栄首相の「日本列島改造論」などに象徴される公共投資をテコにした戦後の経済成長路線が破綻し、膨大な赤字に直面したときに出されたものだ。

この「歳出百科」をきっかけに歴代の自民党政府は1980年代に「増税なき財政再建」を推し進めた。生活保護の国庫負担率の切り下げをはじめ、無料だった高齢者医療の有料化、児童、老人、心身障害者施設の建設費の国庫負担の大幅切り下げなど「福祉切り捨て路線」が強行されたことは遠い過去のことではない。